グロブ

気合い

乖離と不時着

私がかねてより好きだと公言しているアーティストがいる。彼らはブレイクビーツの文脈から所謂EDMを主に制作しているのだが、そこにどことなくニューエイジアンビエントの雰囲気が漂っており、その節々からこれまた得も言われぬセンスの良さが滲み出ている。ジャケ写の世界観も私の好みのど真ん中をぶち抜いているし、どの作品も外れがなくSpotify等との相性も良い。

 

私は自身の音楽について最近様々なことを考える。私は耳コピとは名ばかりのカスジェネリックを生み出すことで精神を満たしている。もともとは勉強の一環として始めた採譜という行為が自分の性格と完璧にマッチし、いつしか目的と手段がアベコンベになってしまっていた。DTMを始めた頃はDTMのことを、「現実では弾けない楽器を寸分の狂いもなくかつ複数同時に演奏することで自身の中の音楽を具現化する術」だと認識しており、前提に作曲という概念が存在していた。当時の浅はかな考えが正しいかは一旦置いておくことにして(というか完全に履き違えてることには目を瞑って欲しい)、以下話を進めたい。

 

初めてそのアーティストに出会ってから数週間以内に私はブレイクビーツというある種の「解答」にたどり着き、YouTubeで「ブレイクビーツ 作り方」と調べるという、まごうことなき雑魚の行動が出来ていた。しかしその数日後にまたしても「解答」にたどり着く。

 

無理。

 

創作において、基礎基本や努力がその半分を占めるとしたらもう半分はセンスと優しさで出来ていると思う。殊にブレイクビーツというジャンルは体感10割、実際は9割9分9厘がセンスという世界であると気づいた私はその瞬間から、ブレイクビーツを雲の上の存在、神々の遊び、崖の上のポニョと認識するようになり、自分の中でパチっとスイッチを切り替えて「ぶれいくビーツ ~挑戦しないんだも~ん~」へとシフトした。

 

上記の負けイベ発生後、私は「やっぱ耳コピしないと。採譜力上げないと話にならない。」と少し背伸びをしながら狂ったように耳コピトライアンドエラーを繰り返し、哀しき耳コピマシーンへの道を歩み始めた。その際に、初心者に毛が15本生えた程度だった私の背中を後押ししたものは間違いなく、使用DAWCakewalkであろう。

 

Cakewalkは余分なサンプルとかが一切入ってないので、ちょっとEDM作ろっかな。「DTM歴3ヶ月の俺がEDM作ってみた」みたいな動画でバズろうかな。みたいなノイズが発生しなかった。ただ理論へ理論へと進むことが至高だと考えていた自分の性分と、Cakewalkの得意とする制作の方向性が噛み合っていたため、それなりに耳コピの回数以上の成果があった。

 

YouTubeに上がっているDTM教則動画のほとんどがCubaseやFLなのは近年のEDM市場ないしは音楽全体の方向性の影響なのかなとも思う(もちろん歴史の深さとか国内シェアとかは承知の上で)。その点、明らかにEDM制作に向いていないCakewalkを最初のポケモンとして選んだ時点でセンス云々の前に、よほどEDMが好きだったり、そっち方面への努力をしたりしていないと私が彼らのような音楽を作るということ不可能であるということなのかもしれない。そして私はEDMにさして明るくないし、明確に音楽観をシフトした経験があるため、現実的に考えて希望は薄いだろう。

 

私は最近、自分の好きな音楽ジャンルに新たな分野を獲得した。1つ目はシティポップ、2つ目はJ-EURO、3つ目は90年代アニソンである。これらを総括できるワードが、3つ目そのものを前後に少し拡張した「古めのアニソン」であると言えよう。幸いこれらには私が今まで漠然と続けてきた耳コピの知識が直結する。しかしこのジャンルが好きになった理由というのもそもそも私が80年代後半~00年代前半のアニソンを耳コピの課題曲として選出していたためであり、ここでもまたアベコンベが登場する。

 

みんなも自分を見失わないで行こうな!あと、EDM作りたいならお金がなくてもCakewalkよりはCubaseとかFL使ったほうが絶対いい。要するにDAW選びは慎重に。